戦略的な視点から見ると、ホームセンターがトイレを安く売る理由には、集客装置としての役割があります。トイレのリフォームを検討している顧客は、必然的にその家の住環境全体に悩みや関心を持っています。トイレという生活に不可欠な設備を安価に提供することで、まずは顧客を店舗に呼び寄せ、信頼関係を築くことができます。一度リフォームを任せてもらえれば、次は壁紙の張り替え、その次はキッチンの修繕といった具合に、リピーターになってもらえる可能性が高まります。ホームセンターにとって、トイレ単体での利益は薄くても、そこから派生する様々な商品やサービスの購入を期待できるのです。さらに、トイレの交換に来た顧客は、工事の待ち時間などに店内の他のコーナーを回ります。そこで新しい洗剤や収納グッズ、ガーデニング用品などをついでに購入してくれることも、店舗全体の利益に貢献します。つまり、トイレは顧客との接点を作るための入り口商品であり、広告宣伝費の一部として安さが設定されている側面もあるのです。また、地域の施工業者とのネットワークを維持するためにも、一定数の工事案件を確保し続ける必要があります。安さで案件を絶やさないことが、優秀な職人を確保し続けることに繋がり、ひいてはサービス全体の質を安定させるという好循環を生んでいます。消費者は、このホームセンターの戦略的な安さを賢く利用することで、高品質な暮らしを低予算で実現できるのです。ホームセンターは数年単位での販売計画をメーカーに提示し、安定した買い取りを約束します。メーカーにとってこれは、工場の稼働率を安定させるための大きな安心材料となります。景気に左右されず一定量が確実に売れるという保証があるからこそ、メーカーは限界に近い卸価格を提示することができるのです。このように、製造、物流、宣伝、販売、施工のあらゆるフェーズで無駄を削ぎ落とし、それぞれのプレイヤーがメリットを享受できるエコシステムが構築されています。ホームセンターのトイレの安さは、現代の小売・製造業における合理化の極致とも言えるでしょう。
なぜホームセンターは赤字に近い価格でトイレを売るのか