それは、非常に冷え込みの激しい一月の夜のことでした。夕食の準備を始めようとキッチンの蛇口を回したのですが、いつもなら勢いよく出るはずの水が、一滴も落ちてこなかったのです。最初はマンション全体の断水かと思い、慌ててベランダから外の様子を伺いましたが、隣の部屋の窓からは食器を洗うような音が聞こえ、共用廊下の照明も普段通り点灯していました。つまり、水が出ないのは私の部屋だけだったのです。パニックになりながら、まずはスマートフォンのライトを手に玄関横のパイプシャフトを開けました。そこにある水道メーターの横のバルブを回してみましたが、しっかり開いた状態です。水道料金も先週コンビニで支払ったばかりでした。次に考えたのは凍結です。私の住んでいるマンションは築年数が古く、玄関が北側に面しているため、寒波の影響をダイレクトに受けてしまいます。懐中電灯で配管を照らしてみると、一部の露出している管がうっすらと白く凍りついているように見えました。どうしていいか分からず、すぐに管理会社の夜間窓口に電話をかけましたが、同じような相談が殺到しているのか、なかなか繋がりません。ようやく繋がったオペレーターの方から、露出している配管にタオルを巻き、その上からぬるま湯をゆっくりとかけるようにアドバイスを受けました。決して熱湯をかけてはいけない、急激な温度変化で管が破裂する恐れがある、という注意を何度も念押しされました。言われた通りに一時間ほど格闘を続けた結果、ゴボゴボという音とともに、茶色く濁った水が少しずつ出始め、やがて透明な水へと戻っていきました。この経験から学んだのは、自分の部屋だけで起きる断水トラブルには、季節特有の要因もあるということです。それ以来、冬場はパイプシャフト内の保温材を新調し、特に寒い夜は少量の水を出しっぱなしにするなどの対策を徹底しています。予期せぬトラブルは、常に私たちの無知や油断を突いてくるものだと痛感した出来事でした。